今回は3Dプリンターの数有るフィラメントの1つであるTPUフィラメントの吸湿によりプリント結果の違いについて書いてみたいと思います。
使用している3Dプリンター
私が愛用している3Dプリンターは『Original Prusa Mini』と『Original Prusa Mk4』なのですが、新居に越して以来私が自由に使ってよい部屋は2畳となり、なかなか3Dプリンターを2台活用するのは難しい状況でした。
そんなおり会社で3Dプリンターを使って設備の製作をしてみたら思ったより好評で、なら使用していない『Original Prusa Mini』を会社に置いて使おうってことになり、現在は家では『Original Prusa Mk4』を使用し会社では『Original Prusa Mini』(以下MINI)使ってプリントしています。
そして今回の記事はMiniを使ってのTPUフィラメントのプリントに関するお話になります。
Original Prusa Miniとは
チェコのPrusa Researchが販売している小型の3Dプリンターです。2018年頃から販売されている3Dプリンターなので最近流行りのcoreXYタイプのプリンター等には印刷スピード等敵わない所はありますが、度重なるファームアップデートで今でも十二分に一線で使用できる3Dプリンターです。
世界的にユーザーが沢山いるのでカスタムパーツやアップグレードパーツなども手に入れやすく、かくいう私も色々とカスタムをしています。
筐体に比例して印刷サイズ(約180×180×180)が少し小さいですが、良くできた3Dプリンターだと思います。
TPUフィラメントって?
今回MINIでプリントしたものは、仕事で鉄板等をクレーンで運ぶ際に使う吊り具のカバーです。
カバーを付ける目的は傷防止が主な理由ですので、使用するフィラメントは比較的柔軟性がありかつ丈夫な材質が良いということでTPUを選びました。
TPUの性質
TPUは、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane)の略称です。プラスチックの一種ですが、一般的な硬いプラスチックとは異なり、ゴムのような弾力性と柔軟性を兼ね備えているのが特徴です。
他の特徴としては
- 柔軟性: ゴムのように弾力があり、曲げたり伸ばしたりすることができます。
- 耐久性: 柔軟性がありながらも、ある程度の強度を持っています。
- 耐摩耗性: 表面がすり減りにくく、繰り返し使用できます。
- 耐候性: 外気に触れても変形しにくく、屋外での使用にも適している場合があります。
- 吸湿性:吸湿しやすいので湿気に注意が必要。湿気を吸ったまま成形すると、成形不良や成形品の物性低下が起こります。
となり、今回作るカバーなどの部品には適した材質だと思います。
あと1つプリント時の注意としてはフィラメント自体が非常に柔らかいのでエクストルーダーからノズルまで距離がある、ボーデンタイプのプリンター(MINI等)ではフィラメント詰まり等のトラブルが起こることがあります。
実際にMINIでプリントしてみた
幾つか有る案の中からハッカーの爪先の部分に被せる形状に決定したので、実物の採寸してデータを作成。
使用したTPUフィラメントはeSUNのFlexible TPU 3Dプリンターフィラメントというもので、硬度は95Aとなっています。
お肌ガサガサのプリント結果に
上のスライサーのデータと少し違いますが、テストプリントでプリントしたものになります。これはどう見てもプリント不良ですね、お肌ガサガサです。
これを見た時はノズルが詰まっているのかなと考えて、エクストルーダーの清掃やら色々してみたのですが改善せず。
新品のフィラメントなので吸湿の問題ではないと思うけど、試しにフィラメントドライヤーを使ってみようかなと思い至りました。
SUNLU FilaDryer S4
今回使用したフィラメントドライヤーは『SUNLU FilaDryer S4』というドライヤーです。実はこのドライヤー半年位前に購入して開封もせず新居の片隅で放置していました。
その理由は上述の通りですね、はい。やはり2畳の部屋であれもこれも置くのは難しいです。
話を戻して『SUNLU FilaDryer S4』ですが4巻同時に保管・乾燥可能とあり本体サイズも大柄になります。
本体サイズは458mm×218×312で重量は4.8kgとなっています。
内部に乾燥剤を入れられる構造になっていますが蓋に密閉性があまり無いので、電源
OFF時での防湿BOXとしてはいささか不安かもしれません。
正面の液晶はタッチパネルになっています。感度は良いですが矢印で変えたい項目までいかなきゃいけないのが少し億劫かも。
付属品はこれだけで距離にもよりますが4巻同時にセットするにはチューブ短いので別途用意する必要があります。
ちなみに本体に4箇所、蓋に4箇所と計8箇所のフィラメント取り出し用のワンタッチノズルが付いています。
詳しい説明はこちらの方のレビューが分かり易いです。
もし購入予定があるなら少しでも安全に使うためにPSE認証取得のサンステラ さんから購入された方が良いかと思います。
フィラメントドライヤーを使用してプリントした結果は!?
という事で『SUNLU FilaDryer S4』を会社に持ち込んで再度プリントしてみることに。
物置の端っこにMINIをおかせてもらっています。今回のカバーが上手くいったら頼まれ事も増えると思うので、もう少し片付けて色々と揃えようかなと計画中。。。
ちなみにMINIの周りに有るのは自作のなんちゃってエンクロージャーです。
チャンバー効果はほぼないですが自作プリント時の匂いをいくらかでも抑えたかったので作って見ました。また機会あれば記事にしようかと考えていましたが、PRUSAからMINI用のエンクロージャーが出たので時期を逃してしまいました。。。
話を戻して『SUNLU FilaDryer S4』を使用してのプリント結果ですがこんな感じです。
はい、全然ちがいますね。同じプリンター、フィラメント、データで印刷したとは思えない程綺麗にプリントできています。
フィラメントドライヤー無しでプリントした物(右)とドライヤーを使用してプリントしたもの(左)を比べると一目瞭然ですね。
見た目も勿論ですが、実際に触ってみると積層間の密着具合も比べ物にならない程改善しているようです。
感想・まとめ
今回は3Dプリンターのフィラメントの1つであるTPUフィラメントが、フィラメントドライヤーを使用すると目に見えてプリントに変化があったので記事にしてみました。
いくら社内設備だといえど余りにも低クオリティーの物を提供して会社の人に「3Dプリンターってこんな物なのね」と思われるのも嫌だったのでこれなら自信をもって提供できそうでう。
あとボーデンタイプであるMINIでのTPUフィラメントのプリントですが、私の場合は難しいことは何もせずにPrusa Slicerのデフォルトの数値でスライスしてプリントしました。
以前にFillamentumというメーカーのTPU98Aをプリントしたときはもう少し手こずった覚えがあるのですが、今回使用したeSUNのフィラメントの相性が良かったのか、単純にフィラメントドライヤーの効果なのか。
どちらにせよボーデンタイプのMINIでも満足できるTPUのプリントが出きる事と、フィラメントドライヤーの有用性が確認できたので良かったです。