今回はDJI OSMO POCKET3の3つのカラーモード、ノーマルカラー・D-LogM・HLGで撮影したものを撮り比べてみました。
結論だけ先に書くと、「HLGで撮影してREC.709に変換した映像はD-LogMで撮影したものより良いんじゃない?」って感じました。
実は撮影するまでは「HLGって何?」って状態だったのですが中々に奥が深いものでした。
それではいってみましょう。
DJI OSMO POCKET3についてはこちらもご参考ください
- OSMO POCKET3のカラーモード
- 3つのモードを比較してみる
- DaVinci ResolveのカラーサイエンスをDaVinci YRGBでREC.709に変換してみる ※11/6更新
- 暗部の比較を見てみる ※11/26更新
- 比較動画
- 感想・まとめ
OSMO POCKET3のカラーモード
OSMO POCKET3(以下Pocket3)には3つのカラーモードで撮影することが出来ます。どのモードで撮影しても綺麗な映像を残せるのですが、それぞれに特徴があって撮影後に一手間かけてあげないと本来のポテンシャルを出せないモードもあります。
以下それぞれのモードの特徴を簡単に説明していきます。
ノーマルカラーモード
Pocke3の基本となるカラーモードです。何も難しい事をしなくても、このカラーモードで撮っておけば綺麗な映像で撮れます。
好みの問題もありますが、個人的にはちょっとコントラストと彩度が強めに感じます。映像的には映えるのでパッと見て「綺麗!」ってウケそうなカラーではあります。
ここから動画編集ソフトで調整することもできます、8bitなのであまりグレーディングに耐性はありませんが、極端な事をしなければまぁ大丈夫かと。
上の映像をDaVinci Resolveでコントラスト・彩度を少し落としてみました。このぐらいの方が目がチカチカしないで好みです。
※動画における8bitと10bitとは記録時の階調性を表すビット深度です。8bitは256階調で1678万色を表示でき、10bitは1024階調で約10億色と8bitに対して4倍の情報量を有しています。なので少々弄っても映像が破綻しません。
D-Log Mカラーモード
続いてD-Log MとはDJIの独自のLogであるD-Logをもとに、より簡易的(D-Logよりは調整幅が狭いようです)にした撮影モードです。編集時にLUT(ルックアップテーブル)を使用した色補正を前提にしているので、撮影した映像はグレイッシュですが10bitでの収録が可能なのでノーマルカラーに比べて調整の幅が広いです。
上の画像のLUT使用前はこんな感じで淡い映像になります。ここから編集ソフトで好みの絵にしていくのですが、よく分からない場合はDJI公式が用意してくれているD-LogM→REC.709のLUTを当てれば初めの画像の様に色が付きます。
※REC.709とはITU-R(国際電気通信連合)が定めた色域・ガンマを再現できるHDTV向けのスタジオ企画です。現行のテレビ放送はこの色域を基準としています。
HLGカラーモード
最後にHLGカラーモードになります。実は私、今回の比較をするまで「HLGってなんぞや最近よく聞くHDRと何がちがうの?」って程度の認識だったのですが、調べてみると中々に奥が深いものでした。
HLG(ハイブリッド・ログ・ガンマ)とは英国放送協会(BBC)と日本放送協会(NHK)が協同で開発したハイダイナミックレンジ(HDR)の技術標準です。
つまりHDRの規格の1つがHLGになるようです。HDRにはその他にもHDR10・HDR10+・Dolby Vision等の規格もあり、それぞれに特徴があるようですが今回は混乱しそうなので(私が)掘り下げません。
HDRであるということは本来のHLGの映像で視聴するためにはHDR対応のディスプレイでの視聴が必須になります。
なのでSDRディスプレイしか持っていない人(私もしかり)にはあまり縁が無いように思いますが、HLGは10bitでの撮影が可能です。そしてHDRであるということはSDRに比べてより広い明るさの幅を有しています。
ということは保持している情報量はD-LogMより多いのでは?と考えDaVinci ResolvenにてHLG→REC.709に変換してみました。
DaVinci ResolveでHLG→REC.709に変換してみる
HLGで撮影したものをSDRディスプレイでそのまま再生するとこんな感じになります。全体的に白飛びしまくったギラギラ映像ですね。
SDRディスプレイは8bitしか表示できないので、10bitの情報量があるHLGをそのまま再生するとこのようになるのは当然ですね。
続いて上の画像はHLGで撮影してDaVinci Resolveで書き出したものです。DaVinci ResolveのタイムラインカラースペースはREC.709になっているので、この時点でREC.709になっていますが少し色褪せたLogで撮影したような感じになっていますね。
そこでDaVinci Resolveのカラーページでノードを追加して、FXエフェクトのカラースペース変換をドラッグ・アンド・ドロップして適応させます。
カラースペース変換の設定は
- 入力カラースペース→Rec.2020
- 入力ガンマ→Rec.2020HLG
- 出力カラースペース→REC.709
- 出力ガンマ→タイムラインorREC.709
としてみました。この設定がなかなか奥が深く色々な組み合わせが可能です。
カラースペースはREC.2020で入力ガンマをREC.709したりと色々と変えて変化をみるのも面白いです。
個人的には上記の組み合わせが一番好みな絵になりました。ちなみにPocket3のHLGカラーモードのHDR要素の詳細は、色域規格がBT.2020・ガンマカーブがHLG・マトリックス係数(輝度と彩度)がBT.2020non-constantとなります。
このあたりはややこしいので私もまだ勉強中です。
そして上記の方法でREC.709に変換して少し調整したものが上の画像です。コントラストも柔らかく個人的には好みの絵にできました。
3つのモードを比較してみる
まず初めに商店街を上から撮影したものです。見た目に一番近いのはD-LogMかな、ノーマルカラーは少しシャープネスが強すぎる感じがしますね。HLGは見た目より明るくなっている印象です。
こちらも上と同じ印象ですね。ただ蒸気機関車のボディの黒と全体の露出でいえばHLGが好ましいように思います、がちょっとアンバーによっている感じもしますね。
これはパッと見でいえばノーマルカラーが綺麗に見えますが、画面下の公園の部分が黒つぶれ仕掛けているところもありますね。HLGは彩度は比べて低いですがやはり階調が豊かに感じます。
DaVinci ResolveのカラーサイエンスをDaVinci YRGBでREC.709に変換してみる ※11/6更新
今回比較するにあたってDaVinci ResolveのカラーサイエンスをDaVinci YRGB Color Managementにしていたのですが、初期の状態であるDaVinci YRGBに戻して変換してみました。
動画から切り出した画像が上になりますが、随分と印象が変わりましたね。
印象としてD-LogM→REC.709の感じに似ていますが、暗い部分などを見ると他の2つのカラーより階調は良好にみえます。
彩度は若干低めですが、このままでも使えそうな仕上がりでこれはこれでありかな。
暗部の比較を見てみる ※11/26更新
ノーマルカラー・D-LogM・HLGの3つのモードの暗部の比較も気になったので簡単に比較してみました。比較したのは動画から切り出した以下の画像です。
※細部の比較になりますので小さな画面(スマフォ等)ではあまり違いがわからないかもしれません。
ノーマルカラーはそのまま切り出ししたものを、D-LogMは公式LUTを当てて切り出しものを、HLGは上記の方法でRec.709にカラースペース変換したものを比較しています。その他の調整はしていません。
暗部の比較の前に各画像のRGBパレードを見てみましょう。
HLG→Rec.709にカラースペース変換したものは右端の柱と、真ん中の雨樋の部分が白飛びしていますね。
ノーマルカラーは上手く値の中に収まったコントラストの高い画像なのがわかります。
D-LogM→Rec.709の画像はHLG→Rec.709と似たRGBパレードになっていますが、若干黒が浮いているようにみえますね。
上記のパレードはあくまで未調整で、HLG→Rec.709とD-LogM→Rec.709に関しては10bitの素材なのでここから調整は可能です。
次はいよいよ暗部の比較を見ていきます。以下の画像は画面真ん中辺りを100%で切り出したもので比較しています。
ノーマルカラーは蒸気機関車の動輪の部分が黒潰れして分からなくなっていますね。それに対してD-LogMとHLGの画像は、動輪とその他の部品も認識出来る範囲で映している事がわかります。
そして黒が浮いている影響なのか公式LUTのシャープネスの具合なのかわかりませんが、D-LogMはHLGと見比べて何かモヤ~としてみえます。
続いて画面右上の部分を同じく100%で切り抜いた画像の比較です。
ノーマルカラーはカラーノイズが出ているのがはっきりわかります。続いHLG→Rec.709が若干カラーノイズが出ています。そしてD-LogM→Rec.709はカラーノイズが殆ど見えませんが何かのっぺりしているようなモヤッとしているような、ノイズリダクションをかけ過ぎてディテールが無くなった画像にも似ているような。
単なるシャープネスの違いかもしれませんし、もう少し検証が必要ですね。
比較動画
比較動画も作ってみました。撮って出しの映像をそれぞれREC.709に変換したものになります。
カラーサイエンスをDaVinci YRGBにしたものです。
感想・まとめ
今回はPocket3のカラーモードについて色々と比較してみました。そのままのノーマルカラーでも綺麗な映像を取ることができます、D-LogMからREC.709にしてもとても綺麗な映像です。しかし冒頭にも書きましたが個人的にはHLGで撮影したものをREC.709に変換したものが一番好みかなと感じました。
この辺りは個人の感じ方もあると思いますが、もう少し色々撮影して素材を弄ってみてまた分かったことがあればブログに書いてみたいと思います。